一般社団法人の設立と手続き

 「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づいて設立された社団法人が一般社団法人です。設立において主務官庁の許可を必要とせず、株式会社と違って財産の払い込みも必要ない、比較的容易に設立できる法人です。
 事業範囲にも制限はなく、営利企業と同じように収益事業を実施することができます。ただし、株式会社のような剰余金や残余財産の分配は認められていません。

設立のメリット、デメリット

メリット

  1. 社会的な信用力
    • 法律行為を行うことが可能(口座開設、不動産所有など)
    • 動資金を確保するための手段がある(基金制度など)
  2. 税制優遇措置
  3. NPO法人よりも設立・運営が容易
    • 所轄庁の認可が不要
    • 事業内容の制約が無い
    • 最低2名の社員で設立が可能

デメリット

  1. 株式会社と異なり、剰余金の分配はできない
  2. 非営利型一般社団法人でなければ、非課税措置がない
  3. 決算報告、変更登記などの法的手続きが発生する
  4. 規模が大きくなっても株式会社に変更できない。

株式会社、NPO法人との違い

主な要件など

一般社団法人NPO法人株式会社
目的事業目的や事業に制約はない特定非営利活動(20分野営利の追求
所有者社員社員株主
定款認証が必要認証が不要認証が必要
認証手数料5万円、書面定款:印紙税なしなし3万~5万、書面定款:印紙税4万円
登録免許税6万円なし資本金の0.7%、最低15万円
設立者設立時社員2名以上常に社員10名以上発起人1名以上
設立手続定款の認証、登記所轄庁の認証、登記定款の認証、登記
役員理事1名以上(理事会設置時は3名以上)理事3名以上取締役1名以上
監事任意(理事会設置時は1名以上)1名以上任意(監査役)
理事会の設置任意任意公開会社は取締役会必須
役員の任期2年(監事:4年)2年(監事:2年)2年~10年(監査役:4年~10年)
報告決算報告所轄庁へ報告決算報告
剰余金原則分配不可分配不可分配できる

定款を作成する

定款とは法人の目的・組織・活動・構成員・業務執行などについての基本規約・基本規則を定義したものです。

絶対的記載事項

  • 目的
  • 名称
  • 主たる事務所の所在地
  • 設立時社員の氏名又は名称及び住所
  • 社員の資格の得喪に関する規定
  • 公告方法
  • 事業年度

相対的記載事項

  • 設立時役員等の選任の場合における議決権の個数に関する別段の定め
  • 経費の負担に関する定め
  • 任意退社に関する定め
  • 定款で定めた退社の事由
  • 社員総会の招集通知期間に関する定め
  • 議決権の数に関する別段の定め
  • 社員総会の定足数に関する別段の定め
  • 社員総会の決議要件に関する別段の定め
  • 社員総会以外の機関の設置に関する定め
  • 理事の任期の短縮に関する定め
  • 監事の任期の短縮に関する定め
  • 理事の業務の執行に関する別段の定め
  • 代表理事の互選規定
  • 代表理事の理事会に対する職務の執行状況の報告の時期・回数に関する定め
  • 理事会の招集手続きの機関の短縮に関する定め
  • 理事会の定足数又は決議要件に関する別段の定め
  • 理事会議事録に署名又は記名押印する者を理事会に出席した代表理事とする定め
  • 理事会の決議の省略に関する定め
  • 理事等による責任の免除に関する定め
  • 外部役員等と責任限定契約を締結することができる旨の定め
  • 基金を引受ける者の募集等に関する定め
  • 清算人会を置く旨の定め

任意的記載事項

  • 社員総会の招集時期
  • 社員総会の議長
  • 役員等の員数
  • 理事の報酬
  • 監事の報酬
  • 清算人
  • 残余財産の帰属

FAQ

一般社団法人は、社会保険に加入するのでしょうか?

法人には、厚生年金と健康保険の加入義務があります。

報酬のある役員、常時雇用の従業員がいる場合で加入条件を満たしているときは、加入が義務となります。

一般社団法人へ寄付する場合、税控除可能でしょうか?

公益社団法人であれば寄付金控除の適用はありますが、一般社団法人の場合は税控除はありません。

ただし、法人が一般社団法人へ寄付をした場合、一般寄付金の損金算入限度額までのみ損金の額(経費)に算入することができます。

登記手続き

登記申請書、登記すべき事項、定款、印鑑届書など必要書類を作成し、管轄の法務局へ提出します。

登記関連書類

  1. 登記申請書
  2. 定款
  3. 設立時代表理事、設立時理事、設立時監事の就任承諾書
  4. 設立時理事、設立時監事の本人確認証明書
  5. 設立時代表理事の印鑑証明書
  6. 設立時代表理事選定書
  7. 主たる事務所所在場所の決定に関する決議書
  8. 設立時理事、設立時監事の専任を証する決議書

設立総会での決議事項

  1. 審議事項
    • 設立趣旨について
    • 定款について
    • 設立時役員の選任について
  2.  開会
    • 開会宣言
    • 出席者の確認
    • 総会が有効成立確認
  3. 議長選出
    • 司会者が一任
    • 全員異議なくこれに賛成
    • 議長の指名と就任
  4. 議事録署名人の選任
  5. 議案の審議及び結果
  6. 社員の印鑑証明書
  7. 議長解任
  8. 閉会

法人設立後の手続き

税金関連

  • 税務署
    • 法人設立等届出書(非営利型は不要)
    • 収益事業開始届出書
    • など
  • 都道府県税事務所
    • 法人設立等届出書
  • 市町村役場
    • 法人等設立届出書

社会保険、労働保険

  • 一定額の報酬の支払いや雇用する場合、届出が必要となります。

非営利型一般社団法人について

要件

非営利型の一般社団法人になるには、非営利性が徹底された法人または共益的活動を目的とする法人のいずれかの要件を満たすことが必要となり、法人の活動実態から税務当局が判断します。

非営利性が徹底された法人

  1. 剰余金の分配を行わないことを定款に定めていること
  2. 解散したときは、残余財産を国・地方公共団体や一定の公益的な団体に贈与することを定款に定めていること
  3. 上記1及び2の定款の定めに違反する行為(上記1、2及び下記4の要件に該当していた期間において、特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを含む)を行うことを決定し、又は行ったことがないこと
  4. 各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の 1 以下であること

共益的活動を目的とする法人

  1. 会員に共通する利益を図る活動を行うことを主たる目的としていること
  2. 定款等に会費の定めがあること
  3. 主たる事業として収益事業を行っていないこと
  4. 特定の個人又は団体に剰余金の分配を行うことを定款に定めていないこと
  5. 解散したときにその残余財産を特定の個人又は団体に帰属させることを定款に定めていないこと
  6. 上記1から5まで及び下記7の要件に該当していた期間において、特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを決定し、又は与えたことがないこと
  7. 各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であること

参考)普通型一般社団法人なら

  • 社員へ剰余金、残余財産を分配する定款の定めは無効ですが・・・
    • 社員以外であれば可能
  • 社員総会で社員に剰余金の分配する決議はできませんが・・・
    • 残余財産の分配は可能
    • 共益的活動を目的とする法人も残余財産の分配可

収益事業

非営利型一般社団法人の収益事業(下記の34事業)から生じた所得は、法人税の課税対象となります。

継続して事業場を設けて行われるものが対象になります。営利性がなかったり、継続性のないものは対象とはなりません。

  1. 物品販売業
  2. 不動産販売業
  3. 金銭貸付業
  4. 物品貸付業
  5. 不動産貸付業
  6. 製造業
  7. 通信業
  8. 運送業
  9. 倉庫業
  10. 請負業
  11. 印刷業
  12. 出版業
  13. 写真業
  14. 席貸業
  15. 旅館業
  16. 料理店業その他の飲食店業
  17. 周旋業
  18. 代理業
  19. 仲立業
  20. 問屋業
  21. 鉱業
  22. 土石採取業
  23. 浴場業
  24. 理容業
  25. 美容業
  26. 興行業
  27. 遊技所業
  28. 遊覧所業
  29. 医療保健業(介護保険事業も含まれる)
  30. 技芸教授業(洋裁、和裁、着物着付け、編物、手芸、料理、理容、美容、茶道、生花、演劇、演芸、舞踊、舞踏、音楽、絵画、書道、写真、工芸、デザイン(レタリングを含む))
  31. 駐車場業
  32. 信用保証業
  33. 無体財産権の提供等を行う事業
  34. 労働者派遣事業

当事務所で対応した場合

法人設立の手順

当事務所へお問合せ

内容を簡単に確認させていただき、今後の進め方を調整し、見積をご提示致します。

法人の形態や称号など必要となる事項を確認させていただきます。

STEP
1

定款の作成と確認

当事務所より定款案をご提示致します。この時点で法人の印鑑(代表者印、法人印)を作成することをおすすめします。

各内容の説明と過不足確認を行います。

STEP
2

公証人との調整

公証人と今後の進め方を当事務所で調整致します。

STEP
3

公証役場での定款認証

立ち会っていただき、公証役場で定款を認証します。

定款認証手続きも代理委託して頂ければ立会も不要です。

STEP
4

法務局で登記手続き

所定の書面を提出するだけなので、ご本人が申請することもできます。

司法書士などに登記手続きを委任することもできます。

STEP
5

報酬お支払い

全てが終わったタイミングで報酬をお払い頂きます。

STEP
6

その後のお手続き

税務署、市町村役場などへの各種届出をする必要があります。

税理士、社会保険労務士などに所定の手続きを委任することもできます。

STEP
7

不明点があれば、お気軽にお問い合わせください。

参考