SES契約書に記載すべき内容

ソフトウェア開発業務においてSES契約が締結されることが増えてきています。SESとはシステムエンジニアリングサービスのことで、ある期間に期間、必要とする人数の 技術者 の役務を提供することで、その時間×人数に応じた委託費用を支払う契約となっています。仕事の完成を目的とせず、事務の提供を目的としているため、法的性質としては準委託契約となる。

記載すべき内容

開発委託契約書の条項として、下記のような内容を記載することをおすすめします。

第1章 総則

  • 第1条(定義)
  • 第2条(契約の趣旨)
  • 第3条(適用条項)
  • 第4条(業務責任者・業務従事者)
  • 第5条(協議会)
  • 第6条(プロジェクト管理の責任)
  • 第7条(委託報酬)
  • 第8条(再委託)
  • 第9条(特許権等)
  • 第10条(知的財産権の責任)
  • 第11条(資料の提供・管理)
  • 第12条(ソフトウェアその他備品の提供)
  • 第13条(秘密保持)
  • 第14条(個人情報)
  • 第15条(期間)
  • 第16条(解除)
  • 第17条(損害賠償)
  • 第18条(反社会的勢力の排除)
  • 第19条(輸出関連法令の遵守)
  • 第20条(完全合意)
  • 第21条(契約の変更)
  • 第22条(権利義務の譲渡禁止)
  • 第23条(準拠法)
  • 第24条(紛争解決)

第2章 準委任契約に関する条項

  • 第25条(確認)
  • 第26条(納入物の所有権等)
  • 第27条(納入物等の著作権)

第3章 請負契約に関する条項

  • 第28条(納入)
  • 第29条(検収)
  • 第30条(契約不適合責任)
  • 第31条(第三者ソフトウェアの利用)
  • 第32条(納入物の所有権等)
  • 第33条(納入物等の著作権)

契約書のポイント

SES契約を締結するような場合、業務を進めるときの指揮命令は委託側(クライアント)が行うのではなく、受託側(ベンダー)が行わなければなりません。契約書上でもその点を明確にするとともに、実際の業務でもそれに従わない場合、偽装派遣とみなされることがあります。

  1. 指揮命令関係について
    • 派遣されるベンダー側のエンジニアに対して、クライアントは直接指示をしない。
    • 労務関係もベンダー側が一切の責任を持つ。
    • ベンダー側で現場責任者を選定する。
  2. 派遣するエンジニアの選定について
    • エンジニアはベンダーが要求にあったスキルをもった人材を選定する必要があります。
    • クライアントが面接などで選定してはいけません
  3. 損害賠償責任約について
    • べンダー側が原因でクライアントに損害が生じた場合の対処について。
  4. 勤務ルールについて
    • 勤務場所、勤務時間、服装などベンダー側で規定する。
  5. 令和2年4月に改正施工された民法にあわせた契約書とする必要があります。
    • 契約不適合責任
    • 損害賠償請求権
    • 契約の解除権
    • 修理・追完請求権
    • 報酬減額請求権
    • 権利行使期間

契約書FAQ

労働局の偽装請負調査はどのタイミングであるのでしょうか?

通報、タレコミや定期調査などで、事前連絡がきてから現場調査が行われます。

契約書などの確認書類や担当者へのヒアリングなどで精査されることになります。契約書は法律上問題がなくても、実態が違法な場合は処罰されることになります。

多重派遣は法律で禁止されていますが、多重SESの場合は、どうなりますか?

原則、SESは再委託はできません。委託者が承諾した場合は問題ありませんが、指揮命令など準委任にしたがった業務遂行方法である必要はあります。

派遣もSESも客先への技術者を派遣することは同じですが、SESの仕事の指揮命令権は常駐先(クライアント)ではなく、派遣元のベンダー側にあります。

一方、派遣契約では仕事の指揮命令は常駐先(クライアント)が直接行います。

工程の性質に照らして下記のような契約形態とされることが多い。

工程内容契約
企画システム化の方向性
システム化計画
要件定義
準委任
準委任
準委任
開発システム外部設計
システム内部設計
ソフトウェア設計
プログラミング
ソフトウェアテスト
システム結合
システムテスト
受入・導入支援
準委任・請負
請負
請負
請負
請負
請負
準委任・請負
準委任
運用運用テスト
運用
準委任
準委任・請負
保守保守準委任・請負
開発工程と契約の性質

請負契約とSES契約つまり準委任契約の法的な違いは、下記のような点となります。

項目請負契約準委任契約
委託の目的仕事の完成事務の処理
義務仕事の完成責任善管注意義務
主な責任仕事の完成が遅れたことによる債務不履行責任
契約不適合責任
善管注意義務を怠ることによる債務不履行責任
再委託定めなし原則として不可
報酬支払時期目的物の引き渡しと同時委任事務を履行した後
期間を定めたときは期間経過後
成果物の引き渡しがある場合は引き渡しと同時
中途終了時の報酬可分な部分について注文者が受ける利益の割合に応じて請求可能既に履行した割合に応じて請求可能
解除債務不履行解除債務不履行解除
任意解除完成前であればいつでも解除可いつでも解除可
解除の遡及効ありなし

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