離婚協議書の作成ポイントと注意点
離婚協議書の作成は、法律上は必須ではありません。しかし、お互いが話し合いを行い財産分与や親権・養育費、慰謝料などの合意内容を書面で明確にすることで、将来トラブルにならないように書面で残すことをお勧めします。
近年、離婚することはめずらしいことではなくなっています。夫が退職したタイミングで、それまで経済的な理由で離婚を控えていた妻が財産を分割して「仕事や趣味でこれからの人生を自分のために歩む」といったご相談も増えております。財産を分割する上で、見落としがちな将来受け取る予定の年金の分割や公正証書にする手順など、当事務所でご協力させていただければとおもいます。お気軽にご相談ください。
離婚協議書を公正証書とする
離婚協議書は、公正証書にすることでより確実な履行を促すことができます。強制執行認諾文言付き公正証書であれば、養育費などの支払いが滞った場合、裁判で判決を経ることなく強制執行の申立てができます。
また、年金を合意分割をする場合どちらか一方が単独で手続きするためにには、離婚協議書の公正証書の抄録謄本または年金分割合意書の認証を受けた私署証書が必要となります。
メリット
- 紛失や偽造のおそれがなく、高い証拠力がある
- 公証人役場に長期間保管されます
- 強制執行認諾文言付き公正証書にすれば裁判をすることなく強制執行の申立てが可能
- 相手への心理的圧力にもなる
- 財産開示手続が利用できる(裁判所へ申立て)
- 債務者が財産開示期日に裁判所に出頭し、債務者の財産状況を陳述させる
- この情報をもとに強制執行手続きを申し立てる
- 第三者からの情報取得ができる(裁判所へ申立て)
- 債務者の財産に関する情報を銀行や年金事務所などの第三者から提供してもらう手続
- この情報をもとに強制執行手続きを申し立てる
離婚給付等契約公正証書(離婚協議書)にすべき項目
- 離婚の合意
- 公正証書の内容に合意して離婚する旨
- 離婚の届出が必ずされるように、届出をどちらがいつまでに行うか決める
- 親権者と監護権者の定め
- 監護権者とは、子の監護養育をする者です。親権とは別に監護者を定めない場合、親権者が当然監護養育することになる
- 子供の養育費
- 養育費は一人当たり、毎月いくら支払うかを定める
- 支払期日も決める
- 子供との面会交流
- 面会交流の頻度、時間などを定める
- 慰謝料
- 慰謝料の取り決めがある場合のみ
- 支払期日、金額を定める
- 財産分与
- 住宅ローンの場合には、名義変更による一括返済なども考慮
- 将来発生する退職金や企業年金も対象とすることができる
- 年金分割の定め
- 合意分割の場合、その割合を定める
- 住所変更等の通知義務
- お互いの連絡先を通知する定め
- 住所を知られたくない場合は、勤務先や電話番号だけを通知する定めもできる
- 清算条項
- 本契約ですべて解決したものとする規定
- 強制執行認諾文言
- 金銭の支払いが滞った時に強制執行ができる定め
公正証書にするための手順
当事務所へお問合せ
内容を簡単に確認させていただき、今後の進め方を調整し、見積をご提示致します。
対面でのお打ち合わせ や オンラインでのお打ち合わせ、または メールベースでやり取りなど、ご希望の方法で必要となる情報を確認させていただきます。
合意書案の作成と確認
当事務所より合意書案をご提示致します。
各条項の説明と過不足確認を行います。
公証人との調整
合意書案ができた時点で、公証人と今後の進め方を調整致します。
合意書についても、公証人と法的な観点を含めて再確認を行います。
公証役場での公正証書作成
当事者に立ち会いのもと、合意書を公正証書とします。
公正証書については、公証役場で20年保管されます。
報酬お支払い
全てが終わったタイミングで報酬をお払い頂きます。
年金分割
離婚する夫婦の年金受給の格差を是正するため、下記の2つの分割方法が可能となっています。いずれも、手続きしなければ分割されることはありません。また、年金分割請求は離婚した日の翌日から2年以内にする必要があります。
合意分割 | 3号分割 | |
双方の合意 | 必要(合意されない場合裁判手続き) | 不要(単独で手続き可能) |
対象期間 | 婚姻期間中の全ての期間 | 2008年4月1日以降の婚姻期間中の第3号被保険者期間 |
按分割合 | 夫婦合計の標準報酬記録の上限を2分の1とした合意割合 | 相手方の標準報酬記録の2分の1 |
請求可能者 | 当事者2人(公正証書などがあれば一方でも可能) | 第3号被保険者であった方 |
分割の手続き
3号分割であれば単独で申請手続きができます。
合意分割の場合は、離婚協議書の公正証書の抄録謄本または年金分割合意書の認証を受けた私署証書があれば単独で手続きできます。
- 公正証書の抄録謄本
- 離婚協議書の謄本でも手続き可能ですが、年金分割に関係の無い部分は省略し、年金分割部分だけの抄録謄本として手続きするのが一般的です。
- 認証を受けた私署証書
- 離婚協議書ではなく、年金分割の部分だけを合意書としたものを、公証人役場で認証したものです。
FAQ
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離婚協議書は、離婚届を出した後でも可能でしょうか?
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離婚届を出した後でも可能です。
しかし、相手方が合意になかなか応じなかったり、公正証書の作成に同意しない可能性があります。離婚届を出す前に、離婚協議書を作成することをお勧めします。
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離婚後に相手に新しい住所を知られないようにするには?
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下記の手順で手続きすることによって、従前の戸籍に新住所が残らないようになります。
- 住民票を移動する前に離婚届を出す
- 除籍後の本籍地は新住所とは別の住所を設定
- 新住所に住民票を移動させる
- 戸籍の附票等の閲覧等の制限をかける
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年金分割の情報提供の請求は当事者2人でする必要があるか?
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どちらか一方のみで請求することもできます。離婚前でも事前にどの程度の年金分割が可能なのか、単独で確認することができます。
参考
当事務所で対応した場合
不明点があれば、お気軽にお問い合わせください。