贈与する場合の非課税枠と贈与契約書の必要性について

相続税対策などで贈与を検討されるケースが増えています。非課税となる贈与の制度があり有効活用することが重要です。また、相続時や納税時のトラブルを未然に防ぐためには、贈与が成立していることを証明する「贈与契約書」の作成をおすすめします。

主な贈与制度の非課税枠

贈与内容最大非課税枠
暦年贈与毎年の非課税枠、定期贈与とみなされないよう注意が必要~110万
相続時精算課税生前に贈与しておき、相続時に贈与財産とその他の相続財産を合計して精算する~2,500万
教育資金の一括贈与子や孫へ教育関連の資金の贈与~1,500万
結婚・子育て資金の一括贈与結婚や子育て資金の贈与、管轄する税務署に申告~1,000万
住宅取得資金贈与住宅取得のための資金の贈与、条件によって非課税枠が変化~1,500万
おしどり贈与居住不動産の配偶者控除~2,000万
2021年6月時点

暦年贈与

贈与税は、一人の人が1年間(1月1日~12月31日)にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。そのため、1年間にもらった財産の合計額が110万円以下であれば贈与税はかかりません。贈与税の申告も不要となるため、「贈与契約書」で内容を明確にしておくことで確実な証明ができます。

定期贈与とみなされてしまうと贈与税がかかります。定期贈与とは、一定期間一定の給付を目的として贈与を行う契約です。毎年100万円を10年間にわたって1,000万贈与したとすると1,000万から基礎控除を差し引いた890万に対して贈与税がかかってしまいます。毎年贈与契約を結び、それにもとづいた贈与が行われれば、各年110万円以下の基礎控除額以下の贈与であれば、贈与税がかかりません。

通帳による振込みでの贈与の場合、その通帳は贈与を受ける側で管理している必要があります。

相続時精算課税

60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子または孫へ財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。相続発生時に相続時精算課税制度を使って贈与した財産を相続財産に加えて相続税を計算する制度です。金融機関経由で納税地の所轄税務署長に対して「相続時精算課税選択届出書」を提出する必要があります。

課税のタイミングが贈与時となるため、値上がりしそうな財産やアパートやマンションなどの収益物件を生む財産では、相続税にくらべて節税できるというメリットがあります。
また、いったん選択するとそれ以後贈与者が亡くなる時まで継続して適用され、暦年課税に変更することはできなくなります。

教育資金の一括贈与

金融機関と一定の契約にもとづいて、30歳未満の子供や孫への授業料等の教育資金を非課税にて一括贈与する制度です。留学費用や塾や予備校の費用にも適用することができます。金融機関経由で納税地の所轄税務署長に対して「教育資金非課税申告書」を提出する必要があります。

結婚・子育て資金の一括贈与

金融機関と一定の契約にもとづいて、20歳以上50歳未満の子供や孫への、結婚・子育て資金を非課税にて一括贈与する制度です。留学費用や塾や予備校の費用にも適用することができます。金融機関経由で納税地の所轄税務署長に対して「結婚・子育て資金非課税申告書」を提出する必要があります。

住宅取得資金贈与

20歳以上の子供や孫への、住宅用の家屋の新築、取得または増改築などの贈与一定の要件を満たすときは贈与税が非課税となります。

契約時期一般の住宅一定基準を満たす住宅(省エネ等基準)
2020年4月1日~2021年12月31日1,000万円1,500万円
消費税が10%の物件の非課税限度額
契約時期一般の住宅一定基準を満たす住宅(省エネ等基準)
2020年4月1日~2021年12月31日500万円1,000万円
消費税8%の新築住宅、個人が売主の中古住宅等を購入する場合

※省エネ等基準
①断熱等性能等級4若しくは一次エネルギー消費量等級4以上であること、②耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上もしくは免震建築物であることまたは③高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上であること

非課税の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に一定の書類を添付して、納税地の所轄税務署に提出する必要があります。

おしどり贈与(贈与税の配偶者控除)

婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用不動産については、2,000万までは贈与税がかかりません。また、暦年課税とも併用することができます。金融機関経由で納税地の所轄税務署長に対して「結婚・子育て資金非課税申告書」を提出する必要があります。非課税の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に一定の書類を添付して、納税地の所轄税務署に提出する必要があります。

贈与契約書の必要性

贈与契約書とは、財産を贈与するときに作成する契約書です。
贈与については口頭でも契約は成立しますが、書面によらない贈与はいつでも撤回が可能な契約となり、税務署などの第三者に対して証明することが大変に面倒になります。贈与契約書はどのようなものいつから誰に対して贈与されたのか証明することができ、相続時や税務調査などでのトラブルやリスクを回避できます。

  1. 贈与を確実に履行できる
  2. いつから、何を贈与されたかを証明できる
  3. 税務調査で贈与を主張できる

<贈与契約書記載>


贈 与 契 約 書

(贈与者)宮城 太郎(以下、「甲」という。)と、(受贈者)仙台 四郎(以下、「乙」という。)は、次のとおり贈与契約を締結する。

第1条

甲は、現金100万円を乙に贈与することを約し、乙はこれを承諾した。 。

第2条

甲は、第1条に基づき贈与した現金を、令和3年6月2日までに 乙が指定する銀行預金口座に振り込むものとする。

この契約を締結する証として、この証書2通を作成し、甲乙双方及び乙の法定代理人が記名捺印のうえ、各1通を保有するものとする。

令和3年5月20日

(甲)      住所  宮城県仙台市青葉区中央1丁目10番10号
         氏名  宮城 太郎                  

(乙)      住所  宮城県仙台市青葉区中央2丁目8番11号
         氏名  仙台 四郎                  

(乙の親権者)  住所  宮城県仙台市青葉区中央2丁目8番11号
         氏名  仙台 一郎                  

(乙の親権者)  住所  宮城県仙台市青葉区中央2丁目8番11号
         氏名  仙台 二子